概要
次世代シーケンサーを用いたT細胞受容体(TCR)およびB細胞受容体(BCR)遺伝子の多様性解析(レパトア解析)の受託を行うサービスです。Adaptor-ligation PCR法を用いることで、定量性に優れた非バイアスのレパトア解析を提供します。
TCRおよびBCRレパトア解析によって導き出された多様性の変化や各遺伝子の存在頻度の違いから、治療効果予測の為のバイオマーカーや自己免疫疾患等の鑑別診断法の開発・研究に活用されております。
特長
- 次世代シーケンサーを用いたTCR、BCR遺伝子のレパトア解析を行います。
- 検体をお預かりし、レパトアジェネシスにてレパトア解析、データ解析を完了した後、結果をご報告いたします。
- ヒト、マウスの血液、組織、培養細胞、ソート細胞のTotal RNAを解析に用います。
- 一つの検体で最大11項目(TCR:α、β、γ、δ、BCR:IgM、IgG、IgA、IgD、IgE、IgL、IgK)のレパトア解析が可能です。
- ご希望により納期の短縮(通常2ヶ月、最速3週間)も可能です。 * 納期の短縮は有償サービスとなります。
サービス内容
- 原理:非バイアス次世代レパトア解析
- TCR、BCR遺伝子の多様性(fig.1)
TCR、BCR遺伝子は、ゲノム上では多数のV(variable)、D(diversity)、J(joining)およびC(constant)の遺伝子断片からなります。分化、成熟の過程で遺伝子再構成が行われ、それぞれ1つずつがランダムに選ばれて結合します。さらにV-D間、D-J間にランダムに塩基の挿入や欠失が起こり、遺伝子の多様性が高まります。その程度はTCRで10の18乗、BCRで10の14乗におよびます。次世代レパトア解析では、この多様性を塩基配列レベルで網羅的に解析します。
- 3つの技術(fig.2)
非バイアス遺伝子増幅、次世代シーケンサー、バイオインフォマティクスの3つの技術から成り立ちます。非バイアス遺伝子増幅では、1セットのプライマーで全TCR遺伝子を増幅するAdaptorligation PCR法を採用しています。本法ではMultiplex PCR法のような多数のプライマー間で生じるバイアスが原理的に発生せず、さらにBCR遺伝子で問題となるポイントミューテーションによるミスハイブリの心配もありません。次世代シーケンサーは、500~600bpのロングリード解析ができるMiSeq(illumina)を使用し、V、D、J、C領域をアサインメントします。バイオインフォマティクスでは、レパトア解析専用ソフト「Repertoire Genesis」を独自開発し、レパトアジェネシス内の専用サーバーで解析します。
- 用途例
対象 | 遺伝子 | 目的 |
血液腫瘍疾患 | TCR、BCR | 腫瘍細胞のTCR、BCR遺伝子をクローンレベルで決定、モニタリング |
薬剤の効果・免疫応答評価 | TCR、BCR | 薬剤投与前後による有効性評価と予測バイオマーカーの探索 |
骨髄移植 | TCR、BCR | レパトアの多様性から免疫能回復を評価 |
がん免疫細胞療法 | TCR | 腫瘍浸潤T細胞や疾患特異的TCRの検出、治療有効性評価 |
感染症 | TCR、BCR | ウイルス特異的TCRの同定、ウイルス抗原特異的抗体遺伝子の同定 |
自己免疫疾患 | TCR、BCR | 自己反応性T細胞や自己抗体遺伝子の同定 |
消化管免疫 | TCR、BCR | レパトアと腸内細菌叢の関連性を評価 |
開発支援 | TCR、BCR | TCR遺伝子治療法、新規CAR-T、抗体医薬等 |
- サービスの流れ
- お見積もり
検体種類、検体数、解析項目数、納期をお伺いし、お見積もりを提出します。
- ご発注
お見積もり内容をご確認の上、お客様からご発注のご連絡をいただきます。
- 検体発送
お客様がRepertoire Genesisに検体を発送します。
- RNA抽出、QC
Repertoire GenesisにてTotal RNA抽出、品質チェックを行います。品質に問題がある場合はご連絡させていただく場合もございます。
- レパトア解析
Repertoire Genesisにて非バイアス次世代レパトア解析を実施します。
- 納品
解析が完了した時点でお客様にご連絡、解析結果を報告書とDVDにて納品いたします。
- 実施例
BALB/cでは、マウス乳がんウイルス(mtv)による特定のβ鎖V遺伝子欠損を有する。C57BL/6とのレパトアの傾向を比較した。(fig.3)
健常者PBMCにおけるTCRα鎖β鎖レパトア解析例(VJレパトア3Dグラフ、ランキング)(fig.4)
ご提供いただくもの
- ヘパリン等で凝固防止された血液
- RNAlater等のRNA安定化試薬で保管された組織検体
- ISOGEN等のRNA抽出試薬で溶解された検体
- ご自身で抽出されたTotal RNA
動物種:ヒト、マウス、その他(ラット、ゼブラフィッシュ等、ご相談ください。)
* Total RNAは大変分解されやすいものであり、分解されてしまいますと良好な解析結果を得ることができません。
検体を適切に処理、発送するためのプロトコールをRepertoire Genesisホームページ内に準備しております。
検体処理を開始する前に必ずご確認ください。
納品物
- 納品書、解析報告書
- DVD(シーケンスデータ、レパトア解析データ、集計データ)