概要
CreativeProteomics社は、最新かつ最高水準のテクノロジーを駆使し、様々な生物由来試料の既知・未知全ての代謝物質を分析します。お客様の目的に合わせて、興味のある化合物の種類やサンプルに合わせた解析方法を提案し、代謝物質の物理的性質に合わせた抽出及び分離プロトコルを用いて、解析を行います。
メタボロミクスは、主に低分子(<1,500Da)代謝産物のハイスループット同定および定量化に関連する「オミックス(Omics)」解析です。ゲノミクス、トランスクリプトミクス、プロテオミクスなどの他の「オミクス」分野では、何千もの標的を同時に定量化することができます。メタボローム解析については、以前は一度に少数の代謝産物しか同定および定量ができませんでした。しかし、現在では、包括的で定量的な代謝プロファイリングへの関心の高まりと共に、昨今の分析技術の向上により、ヒトメタボロームデータベース(HMDB)、KEGG、LipidMaps、PubChem、MassBankなどが充実し、メタボロミクス研究は代謝産物の範囲において、はるかに定量的かつより広範になってきました。
Creative Proteomics社では、非標識メタボロミクスとも呼ばれる「包括的メタボローム解析サービス」を提供し、特定の生物学的条件に関連し得る代謝産物プロファイル間の差異を同定し、対照群と試験群との間の代謝産物の比較から、生物学的有意な分子の同定解析を提供しております。
【解析例】
包括的メタボローム解析は、様々なサンプルに含まれる代謝物に対応することができます。以下の様なサンプルに対して、研究アプローチの1つとして本サービスを選択することができます。
- 血清メタボロミクス(fig.1)
血液は、赤血球および白血球および血小板を含む細胞成分と、血漿と呼ばれる液体担体とからなります。血漿は、血液量の約50~55%を占め、血清は血漿と比較して粘性が低く、フィブリノーゲン、プロトロンビンおよび他の凝固タンパク質をもちません。血清には、栄養素(脂質、炭水化物、アミノ酸など)、タンパク質やペプチド(グロブリン、アルブミン、リポタンパク質、ホルモン、酵素など)、電解質、有機廃棄物など多くの物質が含まれています。体内の小分子の主要なキャリアとして、血清は溶存ガス、ホルモン、栄養素、代謝性廃棄物の輸送に重要な役割を果たします。また、イオン組成や間質液のpH、体の安定化温度、毒素および病原体に対する防御、傷害部位での流体損失の制限などの安定化にも役立ちます。血液はすべての組織および体内のすべての臓器に入るため、様々な生理学的または病理学的ストレスに応じて、様々な組織から分泌、排泄または廃棄されるすべての分子の重要な液体輸送機能を担っています。組織傷害、臓器機能不全および病理学的状態は、血清の化学的およびタンパク質的組成の両方を変化させる可能性があります。
- 尿メタボロミクス(fig.2)
尿メタボロミクスは、特定の疾患または治療的介入によってもたらされる微妙な代謝変化を検出できる非侵襲的バイオマーカーの発見の有力な分野として近年注目されてきています。尿は、腎臓によって生成される無菌の琥珀色で透明な液体です。腎臓は血流から余分な水や糖、およびその他の様々な可溶性廃棄物を抽出します。尿は一般的に、多数の食品、薬物、飲料、内因性の廃棄代謝物、環境汚染物質および細菌副生成物からの代謝分解生成物で構成されます。例えば、ウロビリンは、尿にその特徴的な色を与えるヘモグロビン分解生成物です。尿中には、高濃度のクレアチニン、アンモニア、有機酸、様々な水溶性毒素、アミノ酸代謝による尿素も含まれています。排尿は、水溶性の老廃物を排除するための最も重要なルートです。しかしながら、これらの化合物の多くは同定が難しく、理解が不十分です。
メタボロミクス研究者の中でも、尿は無菌で入手しやすく大量に入手可能で、タンパク質や脂質、複雑な化学物質の介入が少ないため、長年に渡り、診断用生体液として好まれてきました。これまで、グルコース、ビリルビン、ケトン体、硝酸塩、白血球エステラーゼ、比重、ヘモグロビン、ウロビリノーゲンおよびタンパク質のルーチン解析が、他の系における様々な腎臓病態および多くの医学的障害の評価に使用されています。
- 脳脊髄液メタボロミクス(fig.3)
脳脊髄液(CSF)は、中枢神経系で分泌され、脳室、脳および脊柱のくも膜下腔を満たしています。CSFの役割は、脳を物理的ショックから保護することにあります。また、CSFは、脳内の細胞外液からくも膜下腔への能動輸送、またはバルクフローのいずれかによって有機酸を除去し、最終的に静脈血とリンパ系に入り、その工程を通して血液および老廃物からろ過された栄養素および化学物質の循環においても重要な役割を果たしています。ヒトCSFは、神経変性疾患および神経疾患の小分子バイオマーカーが豊富であることが知られています。CSFは容易に入手できませんが、中枢神経系疾患などを潜在的に反映することから、生物医学的研究および臨床化学において特に重要です。
CSFの成分は、脳内の代謝産物生成率に直接依存しています。そのため、CSFメタボローム解析は、脳損傷、多発性硬化症およびパーキンソン病の様な中枢神経系疾患の生化学的な手がかりとなります。
- 植物メタボロミクス解析(fig.4)
植物メタボローム解析は、様々な刺激に対する細胞応答の生理学的プロセスを理解するために使用されています。例えば、硫黄欠乏に応答して、代謝産物が再調節され、硫黄同化、窒素、脂質、およびプリン代謝と光呼吸の増強との間には、厳密な関係があることが判明しています。さらに、メタボロミクスは、寒冷ストレス応答の研究にも使用されています。植物メタボロミクスは、医薬品生産のための生化学的経路、遺伝子機能探索のための代謝工学に利用することができます。
果物や花の色、味、香りに寄与することに加えて、植物代謝産物は、植物における多くの抵抗性およびストレス応答と関連しています。細胞の調節プロセスの最終産物である代謝産物のレベルは、遺伝子改変または環境刺激に対する生物学的系の最終応答でもあります。これらの代謝産物は、細胞内の生理学的変動によって厳密に調節されています。したがって、代謝産物の動態を理解し、代謝経路におけるフラックスを研究し、様々な刺激に応答して各代謝産物の役割を解明するために、植物中の代謝産物を同時に同定し、定量することが必要です。
植物のメタボロミクスの研究は、イオン性無機化合物から生化学的に誘導された親水性化合物、有機およびアミノ酸、および一連の疎水性脂質関連化合物など、様々な物理的特性を有する多数の解析対象からなっています。技術は進歩していますが、依然として植物代謝物の知識は不足しています。植物は非常に多様であるため、それらの解析において、メタボロミクスは重要なツールとなっています。
【解析内容】(fig.5)
未知の化学構造の200~300の化合物に加えて、最大700の同定された代謝物について、LC-MSによる正規化された相対強度をご提供します。ただし、提供していただくサンプルのソースにより、同定された化合物や未同定の化合物の数が異なる場合があります。
全代謝産物において、リテンションインデックス、mass定量化、生化学データベース識別子、全massスペクトルによりレポートが提供されます。
なお、本サービスでは、炭水化物と糖リン酸塩、アミノ酸、ヒドロキシル酸、遊離脂肪酸、プリン、ピリミジン、芳香族をカバーしています。
上記の質量分析サービスに加えて、包括的メタボローム解析では、オプションとしてバイオインフォマティクス解析もご依頼頂けます。
メタボローム解析におけるバイオインフォマティクス解析は以下の通りです。
- 単変量解析:ボルケーノプロット、T検定、Fold Change解析など
- 多変量統計解析:主成分分析(PCA)、判別分析(PLS-DA、OPLS-DA)など
- クラスタリング解析:ヒートマップ、K平均、自己組織化マッピング(SOM)
- 潜在的なバイオマーカーの特定
- 差動代謝物の相関ネットワーク
ご依頼頂いた場合は、上記の内容をすべて実施いたします。
バイオインフォマティクス解析については、データの信頼性と統計的優位性を保持するために生物学的レプリケート数を1グループあたり3以上で構成して頂く必要があります。
サンプル条件
以下は、解析に必要なサンプル量の目安となります。ご提供頂くサンプルによって、解析に使用する必要サンプル量や条件が異なります。詳しくは、フィルジェンまでお問合せください。
なお、メタボローム解析用のサンプルはできるだけ新鮮なサンプルでご準備いただくことを推奨いたします。また、代謝化合物の中には、揮発性の性質を持つ化合物もありますので、基本的には凍結乾燥サンプル等は推奨しておりません。また、代謝分子の安定性を保つため、4℃以上での保管は避けてください。サンプル採取後、-80℃で保存し、凍結・融解を繰り返すことはできるだけ避けてください。
サンプルタイプ |
推奨量 |
血清・血漿 |
150~200μL |
組織 |
50~100mg *組織部位により、必要量が変わる場合があります。 |
細胞 |
1x107個以上 |
その他、体液類(CSF、尿など) |
1.5~2mL *体液組成により、必要量が変わる場合があります。 |
植物 |
500mg以上 *植物の種類や部位(葉、茎、根など)により、必要量が変わる場合があります。 |
細菌(バクテリア)類 |
1x107個以上 *微生物種により、必要量が変わる場合があります。 |