プロテオーム解析には二次元電気泳動と、質量分析という二つの重要な技術があります。二次元電気泳動法は等電点電気泳動とSDS電気泳動のニつを組み合わせることにより、細胞内の全タンパク質を数千以上にもおよぶスポットに分離することができます。それぞれのスポット中のタンパク質をトリプシンで分解し、質量分析で解析することでペプチドの質量や部分配列情報が得られます。これらの情報をデータベース検索することでタンパク質の同定や様々な翻訳後修飾の分析が可能です。
Genomine社は国内外で多数の解析実績を有しており、二次元電気泳動による試料間の比較解析から質量分析計によるタンパク質の同定までプロテオミクス研究を推進する解析一式をご提供致します。
二次元電気泳動解析
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泳動条件及び分析機器]
- 一次元目
等電点電気泳動の実施。Genomine社が独自に開発した等電点電気泳動用のIPG (Immobilized pH gradient)プレキャストゲルを使用します。ゲル長は24cm、pHレンジはブロードレンジpH4-10NL(*)となります。その他のpH range(pH4.5-6.5NL/pH4-7NL/pH6-8NL/pH6-9NL)も対応可能ですのでご希望がある場合はご連絡下さい。
* NL:non-linear pH gradient(分離をよくするため中央付近の pH 勾配をゆるやかにしています。)
- ニ次元目
10~15%グラジェントゲル(24cm x 20cm x 1mm)を用いたSDS-PAGE
- ゲル染色方法
染色方法は下記の3種類からお選び頂けます。
MALDI-compatible ammoniacal銀染色(検出限界0.2ng/spot)
Colloidal Coomassie G-250染色(検出限界は1ng/spot)
SYPRO® RUBYによるタンパク質染色(検出限界は1ng/spot)
SYPRO® Ruby 染色のデータ
- イメージ取込装置:Dyversity(SYNGENE)
- 定量分析ソフト:PDQuest software(version 7.0, BioRad)
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検出結果の提供]
- ソフトウェア(PDQuest v7.02(BioRAD))による自動spot matchを行い、タンパク質の発現量に変化が見られるスポットに関しては、その部分にフォーカスした画像データをご提供いたします。
- マスターゲルにある全てのスポットには固有番号が付与され、解析を通して同じスポット番号として管理されます。
- 二次元電気泳動の実施プロトコルのほか、ゲルのイメージファイルにpI値と分子量を記載したデータをご提供いたします。データに関しては、論文データとしてそのまま利用できるイメージファイルをお送りいたします。(fig.4)
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その他]
- 一次元目のpH勾配に関してはカスタムメイドも可能ですので、ご希望の際はお問い合わせ下さい。
- 分子量マーカーをコントロールのゲルに一緒に流すことも可能ですので、必要な場合はご相談下さい。
二次元電気泳動解析&スポット定量
通常の二次元電気泳動解析に加え、2種類のサンプル間でタンパク質発現量の変化が2倍以上あったスポットに関してIntensity値を提供致します。また、サンプル間の正確な発現の差をIntensity値を用いて計算し、サンプル間の変化率も提供致します。(
fig.5)
二次元電気泳動解析&スポット定量&発現パターン分析
二次元電気泳動解析及びスポット定量に加え、Intensity値を利用して各サンプル間の類似性 (distance、clustering)、発現変化パターンのclassificationなどを整理して解釈しにくい複雑な実験を理解しやすく報告致します。(
fig.6)
* 発現パターン分析は3サンプル以上のタンパク質発現を整理する場合に有効な分析です。
オプションサービス
- SDS-PAGE(1D)
解析内容
・ご送付頂いたサンプルを10~15%グラジェントゲル(24cm x 20cm x 1mm)を用いた SDS-PAGE により分離するサービスです。
・8サンプルまで同一料金です。
・事前にタンパク質の濃縮等、別工程が必要となった場合は1サンプル毎に¥58,000(税抜)となります。
・お送りいただいたサンプルをそのまま流した際にバンドが不明瞭だったり、全く見えなかった場合にも正規費用の請求となります。
- スタンダードマーカーの追加
・二次元電気泳動サービスやSDS-PAGEの際にスタンダードマーカーを追加するオプションです。
・マーカーにはElpisBiotech., Inc.のMid-range Pre-stained Marker(dual color)、分子量範囲15~100kDaを使用します。
- スポットピッキング
・二次元電気泳動サービスやSDS-PAGEを行ったあと、スポットを回収してお客様にお送りするオプションです。
・送料が別途必要となります。
サンプル調製方法
- 4X SDS sample bufferの調製
* 4X SDS sample buffer(modified)組成(2-mercaptoethanol 不含)
250mM Tris-HCl(pH6.8)
8% SDS
0.08% Bromophenol Blue
* 2-mercaptoethanol, DTT等の還元剤、ureaは必ず不含の状態でお送りください。
- サンプル可溶化
サンプルの可溶化は下記の方法を推奨しております。下記に記載の必要サンプル量は目安ですので、サンプルの種類によってはタンパク質量が不足することもございます。予めご了承ください。
また、下記のすべての試料は常温で可溶化してから 90℃で5分間加熱処理後、配送まで-20℃以下で保管してください。
<動物組織>
サンプル量:80mg以上(銀染色の場合は20mg以上)
可溶化法:4 X SDSとして調整したSDS sample Bufferを4倍に希釈し、1 X SDSとしたものを300µL取って組織に加え、ソニケーターやホモジナイザーを用いて破砕します。
さらに 20分以上ローテーター等で撹拌し、90℃で5分間加熱します。
<植物組織>
サンプル量:0.8g以上(銀染色の場合は0.2g以上)
可溶化法: 液体窒素による破砕を行った植物組織粉末0.8gを、200μl 1X SDS sample bufferに入れ、20分以上ローテーター等で撹拌しながら可溶化します。
<培養細胞>
サンプル量(細胞数):1×107 以上(銀染色の場合は2×106以上)
可溶化法: 細胞を遠心分離した後、上層液 (培地成分) は捨て、ペレットを PBS で2~3回洗浄し、洗浄液を取り除いたのちに300µL 1X SDS sample bufferで20分以上ローテーター等で撹拌しながら可溶化します。
<唾液>
口を水でよく洗ってから、たまった唾液を3回程度捨て、唾液1mL(銀染色)~3mLをチューブに入れて4x SDS sample bufferを最終濃度1Xになるように添加して下さい。
唾液サンプルは、血液試料よりも個人差がとても大きく、同一人物の場合でも時間や日にちによって極めて異なる様相となる場合がございます。そのため、疾患マーカーを探索される場合は、正常コントロール群と患者群はそれぞれ最少4人以上をお勧めします。
- タンパク質抽出液の調製(動物組織、植物組織、cellなどをPBS、TBSなど他のbuffer solutionによって抽出した場合)
サンプル量:1mg(銀染色)~2mg程度(Bradford法等で定量して下さい。)
調製法:4 X SDS sample bufferを終濃度が1 x SDS sample bufferになるようにタンパク質抽出液に加え、Vortexで20分間撹拌して調製してください。トータル液量は2mL、タンパク質濃度は1mg/mL が理想です。調製後、90℃で5分間加熱を行ってください。配送まで-20℃以下で保管してください。
*200µgで24cm large gelを用いた二次元電気泳動を1回実施できますが、以後の質量分析を考慮して1mg程度の量をお送り下さい。
- 血清、血漿、尿サンプルの調製
サンプル量: 尿100µL(銀染色)~1mL(CBB)。血清・血漿は100~150µL(銀染色)~300µL 程度。
調製法:4X SDS sample bufferを終濃度が1X SDS sample buffer になるようにサンプルに加え、Vortexで20分間撹拌して調製してください。調製後、90℃で5分間加熱を行ってください。 配送まで-20℃以下で保管してください。
ヒト由来サンプルは提供者のインフォームド・コンセントが得られていることが前提となります。提供者の個人情報が特定できないようにサンプル名を匿名化して下さい。
サンプルのご送付
処理済みサンプルを1.5mLチューブ(スクリューキャップ)に入れ、常温でご送付下さい。
常温露出時間経過による二次元電気泳動のタンパク質安定性テスト結果
<サービスに関する諸注意>
- 特にご指定のない場合は、pH4-10NLの一次元ゲルと24cmのニ次元ゲルを用いて解析を行いますが、その他のpH rangeのゲルも対応可能ですので、ご希望がある場合はご連絡下さい。
- 染色はMALDI-compatible alkaline silver stainingを基本的に行いますのでcoomassie stainingをご希望の方はサービス依頼の際にお問い合わせ下さい(genomic sequencing ができていない種につきましては後のMS分析のために必ずcoomassie stainingを行います)。
- 二次元電気泳動解析を通して得られた結果を基に更にMS解析を行う場合は、興味のあるスポットの番号を提示してタンパク質同定のサービスをお申し込み下さい。料金はサンプルのoriginとどのような同定方法を使うかによって異なりますので、こちらをご参照下さい。
- 結果によらず、分析を実施したところまでの作業費用が発生いたします。
- 塩濃度の高いサンプルは泳動パターンが乱れる可能性がございますので、サンプル調製の際にはご注意下さい。
- 感染性のあるサンプルはお取り扱いできません。
分析サービスの方針
- 情報の守秘
GENOMINE社はサンプルを提出された組織 (機関、会社) との間に秘密保持契約がなくても、提供されたサンプルの情報についての守秘義務を有します。書面での締結が必要な場合はお問い合わせ下さい。
- サンプルの廃棄
GENOMINE社は受託依頼者から依頼されたサンプルについての分析を終了した後、残存するサンプルがある場合には、6ヶ月間またGelの場合は1年間の保管の後に廃棄することを原則とします。
二次元電気泳動解析
分析項目 | 価格(税抜)(*1) (1検体) | 納期(*2)(営業日) |
二次元電気泳動解析(銀染色あるいはCBB染色) |
¥76,000 |
7~10日 |
二次元電気泳動解析(銀染色あるいはCBB染色)&スポット定量 |
¥92,000 |
二次元電気泳動解析(銀染色あるいはCBB染色)&スポット定量&発現パターン分析 |
¥126,000 |
二次元電気泳動解析(SYPRO Ruby染色) |
¥108,000 |
10~14日 |
二次元電気泳動解析(SYPRO Ruby染色)&スポット定量 |
¥128,000 |
二次元電気泳動解析(SYPRO Ruby染色)&スポット定量&発現パターン分析 |
¥168,000 |
*1 ボリュームディスカウント実施中!!
10~19検体:10%OFF / 20~29検体:20%OFF / 30検体以上:30%OFF
検体の委託先への送付料金として¥30,000 (税抜)を別途申し受けます。
本サービスでは最低発注数量2検体となりますので、2検体以上でご注文ください。
*2 繁忙期には記載の納期よりお時間を頂く場合がございますので、お急ぎのお客様はご発注前にお問い合わせ下さい。
オプションサービス
分析項目 | 価格(税抜)(*1) (1検体) | 納期(*2)(営業日) |
SDS-PAGE (1D)(*3) (8サンプルまで / ゲル1枚あたり) |
¥58,000/gel |
7~10日 |
スタンダードマーカーの追加 |
¥2,500/lane |
- |
スポットピッキング |
¥2,800/スポット |
- |
*3 SDS-PAGE 用サンプル調製法
サンプルに4 X SDS sample bufferを最終濃度1 X になるように添加し、Vortexで撹拌して可溶化して下さい。
その後、サンプルを 90℃で5分間加熱して下さい。
各サンプルは タンパク質量濃度1~4mg/mL程度で20µL以上をご送付下さい。
4 X SDS sample bufferは下記のように調製して下さい。
・250 mM Tris-HCl(pH6.8)
・8% SDS
・0.08% Bromophenol Blue
* 2-mercaptoethanol, DTT等の還元剤、ureaは必ず不含の状態でお送りください。