概要
ペプチドミクスは、一般的には生体試料中の内因性ペプチド(~20kDaまで)の体系的、総合的、定性的/定量的なマルチプレックス解析として定義されます。
ペプチドミクスは、プロテオミクスとメタボロミクスの間のギャップを埋める架橋的な戦略として機能しています。
本解析では、シグナル伝達分子(サイトカイン、成長因子およびペプチドホルモンなど)の他、小さなタンパク質断片や疾患特異的なタンパク質分解により切断された可能性が高い未確定機能のペプチドなどを含む多数の可溶性ポリペプチドの変動について、データを取得することができます。(
fig.1)
ペプチドミクスにより、病状や薬物の有効性、あるいは毒性に関する豊富なアミノ酸配列情報を解明することができます。ペプチドミクスにおけるサンプル調整では、分析前に過剰なタンパク質を除去する必要があります。
また、その幅広い機能により、バイオマーカー探索に比類のないパフォーマンスを発揮し、その様な内因性ペプチドは薬物、医薬品、バイオマーカー候補として大きな可能性を秘めています。
解析内容
ペプチドーム解析サービスは、大きく2つの解析アプリケーションから構成されています。
- 包括的ペプチドプロファイリング(fig.2)
本アプリケーションでは、内因性ペプチドプロファイリングが可能です。サンプル中に含まれる最大20kDaまでの内因性ペプチドを包括的に同定します。
検出されたペプチドは、de novo での配列解析、またはタンデム質量分析によるデータベース検索により同定されます。生体サンプル中のすべての内因性ポリペプチドを同定解析したい場合に有効です。
また、ペプチドミクスとプロテオミクスは、研究戦略において基本的な目的や、技術の多くを共有していますが、いくつかの違いも存在します。消化特異性の酵素は、通常ペプチドミクスでは使用されません。そのため、MSおよびMS/MSによる翻訳語修飾を含むネイティブペプチドを同定することが可能です。
サイズ排除クロマトグラフィーを用いて、生物学的サンプル、体液および組織抽出物中のタンパク質の大部分を除去し、LC-MSベースの手法により、迅速かつ高精度に再現性を有するペプチドを同定します。
- ペプチドバイオマーカー特性評価(fig.3)
ペプチドは、生化学プロセスに広く関与しており、理想的なバイオマーカーの候補となります。ペプチドは生体内の様々な領域間を移動することができるため、多くの病理学的プロセスにおいて、異なる生体領域におけるペプチド組成の変化に関連していると考えられています。実際にペプチド量の変化は、様々な病気に関連していることが分かっています。
ペプチドバイオマーカーをスクリーニング、および検証するには2つのタスクを並行して実施する必要があります。サンプル中に存在するペプチドを同定(定性的)および対応する濃度を決定(定量的)する必要があります。
本アプリケーションでは、サンプル中に存在するペプチドを同定するだけでなく、各ペプチドに対応した濃度の絶対定量解析が可能です。
質量分析による絶対定量では、お客様のご希望に合わせ、各標的ペプチドに対してアッセイの開発から実施します。
解析したいペプチドに対して、同位体標識ペプチドを合成し、対応する濃度比をX軸に、ピーク面積比をY軸とした標準曲線を作製し、その標準曲線を基にサンプル中の標的ペプチドの絶対定量を行います。