概要
水中に含まれる環境DNAから、対象とする生物のDNAを検出する種特異的解析と様々な生物のDNAを同時に検出する網羅的解析をご提供しています。調査の提案や計画、採水とDNA解析、リスト・報告書作成までを一元して対応可能です。
環境DNAとは
動植物の排泄物、体毛や皮膚などの組織片に由来したDNAは、水中や土壌などの環境中に放出され存在しています。この環境試料から採取されるDNAは環境DNAと呼ばれます。
* 環境DNAに関する留意点
- 環境DNAの元となった生物の個体情報はわかりません。
例)成長段階(年齢)、性別、生死
- 交雑個体については、生物種によって検討が必要です。
- DNA配列が明らかでない種もありますので、対象種についてはあらかじめご相談下さい。
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特長
環境DNA解析は、従来の捕獲調査に比べ、低コスト・低負荷・スピーディーな生物調査を実現を可能とします。(
fig.1)
種特異的解析
目的の種があるとき、対象とする生物のDNAを検出します。(
fig.2)
こんな時…
- 対象種がいるかを知りたい
調査したい場所で、対象種(例:重要な生物や外来生物など)が生息しているかどうか知ることができます。
- 類似する種を区別したい
類似した複数の種が同所的に生息している場合や、在来種とそれによく似た外来種がいる場合に、どの種であるかを区別できます。
- 生物の多少を知りたい
DNA量から対象種の多少を相対的に把握することができます。例えば季節的、立地的な動向等を把握することで、重要種の保全や外来生物の防除、水産資源の管理を効果的に行うことができます。
網羅的解析
どんな環境か知りたいとき、様々な生物のDNAを同時に検出します。(
fig.3)
こんな時…
- 生物相が知りたい
調査したい場所に生息する生物のリストを作ることができます。
- 保全すべき地域を知りたい
いくつかの調査場所について生物相を調べ、保全の必要性が高い地域を推定することができます。例えば、環境アセスメントにおいては、計画の初期から効率的に検討を進めることができます。
- 生物相をモニタリングしたい
継続的な調査、データの蓄積により、生物相を安定的にモニタリングすることができます。保全対策の見直しなどもリアルタイムに行うことができます。
環境DNA分析結果のスクリーニング
環境DNAによる分析は、識別できない種があったり、排水などの混入によって非生息種のDNAを検出してしまったり、DNAデータベースの整備が完全でないために異なる種名として検出してしまうなど万能ではないことが知られています。そのため、分析結果について専門家による精査が求められています。中外テクノス社では魚類分類の専門知識を持つスタッフが在籍しており、分析結果についてスクリーニングを実施しています。
スクリーニング事例
スクリーニングによって、明らかな非生息種、分類学的に適切でない種名などがみつかりました。(
fig.4)
環境DNA解析事例
魚類を検出対象とした環境水の解析(
fig.5)
検出種 | 学名 | 検出割合 |
ウナギ | Anguilla japonica | 1.73% |
ブルーギル | Lepomismacrochirus | 1.37% |
カラドジョウ | Misgurnusmizolepis | 7.78% |
ドジョウ | Misgurnusanguillicaudatus | 1.01% |
モツゴ | Pseudorasboraparva | 10.45% |
コイ属の魚種 | Carassiussp | 8.39% |
ゲンゴロウブナ | Carassiuscuvieri | 2.60% |
タモロコ | Gnathopogonelongatus | 1.52% |
コイ | Cyprinuscarpio | 1.41% |
ヨシノボリ属の魚種 | Rhinogobiussp | 18.65% |
マハゼ | Acanthogobiusflavimanus | 11.32% |
ビリンゴ | Gymnogobiusbreunigii | 4.36% |
スミウキゴリ | Gymnogobiuspetschiliensis | 3.79% |
チチブ | Tridentigerobscurus | 2.74% |
スズキ | Lateolabraxjaponicus | 1.46% |
ボラ | Mugilcephalus | 20.37% |
その他の魚類 | - | 1.03% |
合計 | 100% |
* 中外テクノス社工業技術センター(市原市)近傍の河川水を分析し、検出された魚類一覧
(検出割合が1%未満の魚種はその他としてまとめた)。