概要
Agilent Technologies社のAgilent miRNAマイクロアレイは、miRNAの解析用のアレイです。搭載されたプローブは、60mer前後のオリゴヌクレオチドプローブで、 成熟型(完成型)のmiRNAのみを検出することが可能です。miRNAプローブはSANGER miRBaseの登録情報を基に設計されております。使用しているデータベースmiRBaseのバージョンアップに伴い、搭載されているmiRNAの情報もアップグレードしています。
例えば、Human miRNA Microarray Rel 18.0は、Sanger データベースv.18.0 に基づく1,919種類のヒトマイクロ RNA(miRNA)の プローブが搭載されております。さらに、カスタムにて最新のデータベースの情報をもとにアレイを作製することも可能です。
Agilent miRNAマイクロアレイでは、total RNA 100ngが必要であり、miRNAまたはsmall RNAへ濃縮精製する必要はありません。 miRNAを含むtotal RNAはCalf Intestine Alkaline Phosphatase(CIP)によって脱リン酸化反応を行います。続いて、T4 RNA Ligaseを用いてRNA分子の3’末端側に1分子のCyanine 3-Cytidine Bisphosphate(pCp-Cy3)を標識します。カラムによって精製を行った後、標識miRNAをAgilent miRNA microarrayに ハイブリダイズし分析を行います。
プローブのデザインは、Linker配列、標的のmiRNAに相補的な配列、ヘアピンキャップ構造の配列の3つから成ります。
ヘアピンキャップ構造によりmiRNAの長さを選択することができ、前駆体であるPre-miRNA、Pri-miRNAは結合することができず、 成熟型(完成型)のmiRNAのみがプローブに安定してハイブリダイゼーションできます。
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fig.1)の黒い部分は、合成された配列である未修飾のマイクロアレイプローブ(黒)で、この部分が、ターゲットとなるmiRNA(赤)とハイブリダイゼーションにより結合します。プローブはスティルト(オリゴヌクレオチドで構成された足)(茶)によりガラススライド表面に固定されています。
A:hybridization sequenceの5’末端にあるG残基(黒)は、miRNAの3’末端にラベリングにより導入されたC残基(緑)と 相補的に結合します。このG-C対がプローブとターゲットの反応領域に加わることで、ターゲットとなるmiRNAが、他の相同なRNAよりもプローブに安定して結合します。 また、すべてのプローブには、プローブとターゲットの反応領域に隣接して5’末端ヘアピン(青)が付加されており、miRNAのサイズに対する特異性を高めています。
B:安定性が高すぎるため最適化が必要なプローブでは、miRNAの5’末端から塩基配列を除去することで、プローブとターゲットの安定性を調節しています。
データ解析について(fig.2)
マイクロアレイ発現解析と同様に、各miRNA のシグナル強度(数値)をご報告します。
さらに、差のあるmiRNA については、TargetScanを用いて各miRNAが制御する可能性のあるターゲット候補の遺伝子リストをご報告します。
TargetScan等で知ることのできるmiRNAのターゲット候補は、1miRNAあたり514~1,519遺伝子にもおよびます。ターゲット候補遺伝子のリストについては、DAVID等に用いることで機能解析をすることが可能です。
また、miRNA アレイ解析によって有意に変動があったmiRNA群の全体のターゲット候補は、20,000遺伝子にもおよぶことがあります。このような膨大な候補が挙がった場合には、同じRNAサンプルを用いて、別途発現解析のデータを取得して発現変動遺伝子との共通遺伝子を絞り込むことも可能です。