概要
タンパク質のリン酸化は、細胞の増殖の調節や酵素の活性、細胞内シグナル伝達などに関わる重要な役割を果たしますが、遺伝子解析では推定することができず、タンパク質を直接解析する必要があります。本サービスでは、プロテオーム解析技術を用いたリン酸化タンパク質のプロファイリングに加えて、リン酸化部位の同定作業も実施します。
リン酸化タンパク質濃縮カラムによる網羅的解析
リン酸化タンパク質を濃縮して精製することで、細胞中に微量に発現したリン酸化タンパク質を捉えることが可能です。
- リン酸化タンパク質と非リン酸化タンパク質を分離します。
- 濃縮することで、発現量の低いリン酸化タンパク質も分析可能です。
- 濃縮後は二次元電気泳動、ミニゲルSDS-PAGEのいずれにも対応可能です。
[解析例](
fig.1)
マウスES細胞は増殖因子の一種であるLeukemia inhibitory factor (LIF)の添加によって、多能性を維持した状態で培養が可能です。 この機構にはJAK-STAT3シグナル伝達系の活性化が重要であることがわかっていますが、それ以外のシグナル系も重要であると考えられています。そこで、LIFを添加することでES細胞内のリン酸化タンパク質がどの様に変動するか、リン酸化タンパク質に親和性のあるカラムと二次元電気泳動・質量分析計を用いて、網羅的に解析しました。
* カラムを使った濃縮によって全タンパク質の約10%がリン酸化タンパク質フラクションとして回収されました。
* 取得されたリン酸化タンパク質を二次元電気泳動によって分離したところ、LIFの有無によって変化する
タンパク質スポットを多数検出することができました。
* 本研究は広島大学大学院理学研究科発生生物学研究室との共同で行われました(2002~2004 年)。
リン酸化タンパク質染色による網羅的解析(fig.2)
リン酸化タンパク質を特異的に検出する手法として、リン酸化タンパク質蛍光染色法があります。1枚のゲルをリン酸化タンパク質染色・SYPRO
® Ruby 染色と順次染色し、両泳動像のパターンを比較解析することができます。
脱リン酸化酵素によるリン酸化タンパク質の網羅的解析(fig.3)
脱リン酸化酵素によってリン酸化タンパク質からリン酸基を除去すると、タンパク質の等電点に変化が起きます。この現象を利用して、等電点方向のスポットの変化が起こったものに注目してリン酸化タンパク質の網羅的解析を行います。
[解析例](
fig.4)
リン酸化部位同定解析
リン酸基の結合したペプチドを質量分析計で観測できることは少なく、通常の方法でリン酸基結合部位の同定を行うことは困難です。前処理を行うことで、リン酸基結合ペプチドを観測しやすくし、リン酸化部位の同定を行います。(
fig.5)
- リン酸化タンパク質を数種類のタンパク質分解酵素で切断することにより検出ペプチドのカバー率を高め、高感度質量分析計を用いたリン酸化部位同定を行います。
- リン酸化部位同定の成否は、リン酸化ペプチドを精製・回収できるかに依存していますが、独自のノウハウにより成功率を高めることができます。