概要
医化学創薬株式会社の高発現細胞作製受託サービスは、 広島大学で新規に開発されたIR/MAR遺伝子増幅法(特許3755028号)をご利用いただけます。また、医薬品生産の現場などで、最も頻繁に用いられている方法であるdhfr/MTx遺伝子増幅法での構築も承ります。
特長
- 哺乳動物細胞発現系の利点
哺乳動物細胞を宿主としたタンパク質発現系は、他の発現系では必ずしも充分ではない、適切な立体構造や翻訳後修飾を必要とするようなタンパク質の生産や機能解析研究などの目的で利用されています。
- 遺伝子増幅法の利用
決して生産能の高くない哺乳動物発現系において、その生産性を最大限に高めるため、遺伝子増幅法が用いられています。この方法で構築した発現細胞株では、導入遺伝子が多コピーに増幅されています。
- 2つの原理による遺伝子増幅法から選択
抗体医療をはじめとするバイオ医薬品の生産に用いられるdhfr/MTx法と、dhfr/MTx法のおよそ半分の期間で高発現株が得られるIR/MAR遺伝子増幅法からお選びいただけます。
IR/MAR 遺伝子増幅法(fig.1)
広島大学生物圏科学研究科の清水典明教授らによって発見された方法で、複製開始領域(IR:Initiation Region)と核マトリックス結合領域(MAR:Matrix Attachment Region)と呼ばれる特殊な配列と、目的遺伝子の発現ベクターを培養細胞に共導入します。これにより目的遺伝子が効率的に増幅され、Double Minutes(DMs)様の構造やHomogeneously Staining Region(HSR)を形成します。ゲノム上で多コピーとなった目的遺伝子によって、目的タンパク質の発現量が飛躍的に増大します。この方法は細胞株を選ばず、任意の細胞株でタンパク質高発現株を作製することが可能です。
* 基礎検討用として、タンパク質高発現試薬TG-Sure Expression (IR/MAR)もご用意しています。
dhfr/MTx 遺伝子増幅法(fig.2)
ジヒドロ葉酸リダクターゼ(dhfr遺伝子)を欠損したチャイニーズハムスター卵巣由来細胞株CHO/DG44は、培地中にチミジンとヒポキサンチンを要求する細胞株です。目的遺伝子の発現ベクターとdhfr遺伝子の発現ベクターを共導入します。そこにDHFRの拮抗阻害剤であるメトトレキセート(MTx)を段階的に加えることで、目的遺伝子が複製され高発現株を取得することができます。この方法は、バイオ医薬品の生産の現場で最も頻繁に用いられている方法のひとつです。
IR/MAR法とdhfr/MTx法の比較(fig.3)